高齢者ハンドマッサージの注意と効果

日本エナジーハンド協会

90歳を超えた手は神々しく美しい。その手にふれる幸運に恵まれた方へ、高齢者ハンドマッサージの注意点と効果について経験からまとめてみました。

高齢者ハンドマッサージの注意

目的をはっきりさせる

90歳以上のご長寿には、筋肉をもみほぐすハンドマッサージは向いていません。循環器の代謝を促す優しいハンドトリートメントや肌のふれあいで幸せホルモン・オキシトシンの分泌を促すタッチケアが適していると感じます。

痛みを訴えている場合~痛みの減少

痛みを訴えている場合は、優しく心をこめてふれることでオキシトシンの分泌を促し、痛みを和らげる効果が期待できる。オキシトシンの分泌を促すためには自然な手の重みをかけて密着させ、秒速5センチ程度のスピードでエフルラージュをすると良い。高齢の場合、触覚の老化によりタッチが軽すぎると心地よさを感じない可能性があるが、強すぎると筋肉、血管、骨に影響を与えてしまう可能性があるため、ほどよい圧で施術する。そのために皮膚刺激の少ないオイルやクリームを潤滑油として使用する手技が望ましい。

痛みはなく軽度の認知症で会話が可能な場合~脳の活性

この場合の目的は、副交感神経に傾きがちな自律神経を活性し、交感神経優位にすることである。そのため、笑顔が引き出せるような声がけや会話ができることが望ましい。おしゃべりをしてくださるなら、相づちをうって話を聴きながら手をリズミカルに動かすようにする。唄をうたっていただけるようなら、高齢者の唄にあわせて手を動かせると脳の活性に高い効果が期待できる。注意点としては、何回目の施術であっても、まったく初めての時と同様に挨拶を丁寧にすること、施術の同意を得ること、何をするかはじめから説明すること。

痛みはなく認知症で会話が難しい場合~不安感の減少

この場合の目的は、肌から「あなたを大切に想っています」という命に対する尊敬の念を伝えることである。そのため、嫌がらない程度に肌と肌がふれあうタッチケアの技術を優先させる。ふれることで愛情ホルモン・オキシトシンの分泌を促し不安感を和らげることを期待する。オイルやクリームをつけることを嫌がる場合は、何もつけないタッチケアの手技か、ドライのハンドトリートメントで対応する。背中のタッチケアも有効である。

寝たきりの場合~褥瘡予防

日中のレクリエーションとしておこなう場合は、ベッドサイドに座った技術者と視線があうように上半身をおこせるとコミュニケーションがとりやすく脳の活性が期待できる。褥瘡予防を兼ねる場合は、シムス位をとり、片腕ずつ別の方向から施術すると良い。夕方安眠のためにおこなう場合は本人の一番楽な姿勢のままおこなう。

圧に注意する

高齢の場合、指の関節のダメージや高血圧など持病がある場合が多いため強い圧ではおこなわない。筋肉をもみほぐすしたり、経穴を刺激するといった手技よりも優しいタッチで密着したエフルラージュが適している。加齢により触覚が鈍化するため、弱すぎるタッチも好まれない。強すぎず、弱すぎず、自然な手の重みで密着させることが大切。

施術時間に注意する

セロトニン神経を活性するためには15分から30分までのトリートメントが望ましい。ただし本人が施術に集中できなようであれば無理強いせずに途中で切り上げる。終末期の場合も、疲れていないか確認しながらおこなう。一般的に20分を目安としてあまり長時間にならないようように注意する。もちろん、ホームケアなどで手をにぎってよりそうような場合時間に制限はない。

体温変化に注意する

ひじ上まで洋服をまくり施術する場合、可能なかぎり触れている部分以外はタオル等でくるむなどして保温に注意する。リラックスすると体温が下がるため、室温がやや寒いと感じる場合には肌を出さないドライのハンドトリートメントが望ましい。

高齢者ハンドマッサージの効果

孤独感を和らげる

高齢になると、認知機能の衰えによって五感(視覚、聴覚、味覚、嗅覚、触覚)が衰えるため、コミュニケーションがとりにくくなり、孤独を感じやすい状態になる。そのような状態でも肌と肌がしっかりとふれあっていると、温かさ、心地よさをダイレクトに感じることが出来て、生きている実感、大切にされている実感を感じていただける。

不安感を和らげる

優しくふれることでオキシトシンの分泌が増えると、不安や恐怖を感じる扁桃体の働きが抑えられ不安感を和らげることができる。不眠、暴言などの改善き効果が期待できる。

痛みを和らげる

ゲートコントロール説によると、ふれている間は痛みより心地よさを優先させて脳に伝えると考えられており、トリートメントにより痛みを感じない時間を作ることが期待できる。

まとめ

90歳を超えるご長寿にも、身体に負担をかけることなく温かいコミュニケーションが楽しめるハンドトリートメントは、今後ますますひろがっていくでしょう。少しの注意だけで、どなたでも楽しむことができます。

注意することは、施術の目的を明確にすること

・痛みの減少?

・脳の活性(レクリエーション)?

・オキシトシンによる不安感の減少?

・褥瘡予防?

そして、トリートメントの圧、施術時間、体温変化に注意すること

ご高齢者へのハンドマッサージは、孤独感、不安感痛みを和らげハッピーホルモン・オキシトシンの効果でポジティブに楽しい感覚を蘇らせる効果が期待できます。

でも90歳を超えるご長寿のトリートメントをさせていただく時、ご本人よりも施術者である私たちが得るものの方が大きいと感じます。「生きる」ということ「命」というものを、言葉ではなく手から伝わってくる重みは表現のしようがありません。戦時中のお話しをうかがう時は、まるで一本の映画を観るような感覚になります。言葉は断片的ですが、それ以上に伝わってくるイメージは強烈です。

何歳になっても、どのような状態になっても、命の尊厳だけは守って差し上げたいと強く願います。自分自身の最期を考えた時、やはり尊厳をもって扱われたいと願うからです。

しかしそれが叶わないほど多忙な現場の看護師、介護士、ご家族、スタッフの皆さまの疲れが、トリートメントの時間を持つことで少しでも楽になることを願わずにいられません。

自分も人も元氣にできるハンドトリートメントが当たり前の日本になりますように。

一般社団法人日本エナジーハンド協会